
福祉系に興味が無いと全然聞いたことが無いかもしれない就労継続支援事業所。
簡単に説明すると、障害を持った方に就労するための技術習得や就労の機会を提供する障害福祉サービス提供事業所です。
この就労継続支援事業所には3つの事業形態があり、一つは就労移行支援事業、もう一つが就労継続支援A型事業、最後3つ目に就労継続支援B型事業があります。
ここまでいいですか??
目次
それぞれの事業所の役割
就労移行支援事業
通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる障害を持った方に対して、就労に必要な知識能力訓練、求職活動支援、職場開拓といったサービスを提供します。
就労継続支援A型事業
通常の事業所で雇用されることは難しいが、雇用契約に基づく就労が可能である障害を持った方に就労機会の提供と就労に必要な知識、能力向上、訓練支援を提供します。
就労継続支援B型事業
通常の事業所に雇用されることが困難で、 雇用契約に基づく就労が困難である障害を持った方に対して、 就労機会の提供、就労に必要な知識、能力向上、訓練支援を提供します。
ここで、就労継続支援A型事業と就労継続支援B型事業って一見同じようなこと書いているように見えますが、微妙に異なる点が一箇所あります。
それは、A型事業では利用者と雇用契約を結びますが、B型事業では利用者とは雇用契約を結びません。
同じ利用者であっても、そこに施設と雇用契約があるかないかで異なります。
ということは、雇用契約がある以上、A型事業所では利用者に賃金の支払いがあり、最低賃金以上の賃金支払が必要になるので、利用者ではありますが通常の労働者と変わらない雇用条件が求められます。
一方で、B型事業所では雇用契約は結びませんので、利用者には工賃といった形で賃金が支払われますが、A型事業所と比べると少ない賃金となる場合が多いです。
前置きが長くなってきましたね。
ここで、経営を考えたのは就労継続支援A型事業の経営を考えています。
・・・どうしてか?
それは、A型事業所では利用者と雇用契約を結ぶ事になっているからです。
きっと勘がイイ方はここでわかってきたはず。
今50名以上の企業には障害者雇用率制度が適用されます。
雇用率は現在2.0%なので、50名の常勤職員がいる事業所では1名の障害者雇用が義務となっており、さらに100名超の事業所になると、障害者雇用率の不足人数に対して、月額4万円~5万円の納付金支払いが必要となります。
例えば、常勤職員数1,000名の医療介護サービスを提供する法人の場合。
1,000名 × 30%除外率 = 300名
1,000名 - 300名 = 700名
700名 × 2.0% = 14名・・・必要障害者雇用者
14名が必要な障害者の雇用数となります。
さらに、障害者が6名しか雇用されていない時。
14名 - 6名 = 8名
8名 × 月額50,000円 × 12ヶ月 = 480万円 ・・・障害者雇用納付金
8名の障害者雇用が不足している場合、年間で480万円もの雇用納付金支払いが必要となります。
これって大きい金額ですよね。
これも考え方一つですが、障害者を8名雇用して1人あたり年間200万円の給与を支払うと総額で1,600万円の支出増加になるよりも、障害者雇用納付金480万円を支払った方が法人として負担が少ないという考え方もあるかもしれません。
実際に、無理に障害者を雇用しても、その事業形態に合わず障害者にとって適した仕事を任せることが難しいこともあります。
そうなると、障害者は雇用したけど有効に仕事を任せられていないのは障害者にとっても事業者にとっても意味がある雇用ではないですよね。
こんな時は障害者雇用納付金を支払っていた方が、事業所側としては負担が少なくなるのかもしれません。
ただし、この障害者雇用についてはその毎年の取り組み状況がチェックされ、改善がされていない、取り組みが甘いと判断された場合には行政指導という措置も取られ、さらに取り組みがされない場合は企業名の公表という措置が取られることもあります。
つまり、まったく障害者を雇用する意思がない状態は許されていませんので、何かしらの障害者雇用の取り組み姿勢は大切です。
ここで話を戻します。
この障害者雇用率制度を達成する、そして、障害者にとってよりよく働ける環境を作るためにも就労継続支援A型事業所の開設が必要になってくるのではないかと考えたところです。
就労継続支援A型事業所で利用者と雇用契約を結ぶことで障害者雇用割合のアップが期待できますよね。
そして、障害者にとって、気軽に相談できる担当者も必要でしょ。
また障害者に業務の指導をする担当者もいた方がいいですよね。
それぞれ配属されて部署の長が個別に障害者の指導をするよりも、就労継続支援A型事業所に配属した職員が各部署に配属された障害者を就労管理、業務管理する方が法人全体として体制が整う。
それに、障害者のことを理解した担当者が近くにいることが障害者の安心にもつながりそうです。
今後社会への貢献ということで障害者雇用率の引き上げや納付金の引き上げということがまだあるかもしれません。
そんな状況になった際も、障害者受け入れの入り口を明確に外部に示しておいた方が障害者雇用に困ることも無いのではないでしょうか。
ここまでの流れが、就労継続支援A型事業が必要である、有効である理由。
では、実際にこの事業が事業として経営できるのか。
今回の本題にようやく入ります。
就労継続支援事業所として経営がどうなるかをシュミレーションしました。
結論としては事業所として利益は出るけれども、法人としては損失がでる。
シュミレーション内容は、一つの法人内で事業所を各種運営を行う体制の時、就労継続支援事業所を新規に開設します。
就労継続支援事業所の運用としては、法人内の各事業所で利用者が業務の一部を担当してもらうことで業務委託料を各事業所から売上として徴収する方法です。
この仕組みであれば、就労継続支援事業所自体の収支はマイナスになりません。
利用者の賃金に合わせて各事業所から業務委託料を徴収するので就労継続支援事業所の収支はプラスにできます。
しかし、法人全体で収支を考えると障害者雇用納付金を払うか、利用者に賃金を払うかの違いです。
先ほどの計算通り、金銭的なメリットだけを考えると障害者雇用納付金を支払ったほうが金銭負担は少なくなります。
その代わり、障害者雇用率制度は達成が可能。
障害者の就労管理がしやすくなる。
後は、利用者が労働者となることでどれだけ労働者として業務に活かせることができるか、この辺が就労継続支援事業所を開設する重要な役割になりそうですね。
では、純粋に就労継続支援事業所を収益事業として考えるとどうか。
例えば、一旗揚げて起業をしたいという時に就労継続支援事業所はその選択肢に入るかどうか。
正直、私が始めようと考えた時には、その選択肢には入らないです。
社会的な役割はとても意味のある事業所であることはわかります。
ただし、稼げるか稼げないかで考えると、A型事業所だからではなく、B型事業所としてもあまり魅力があるとは言えません。
別途に柱になる事業を持っていて、障害者の雇用がその事業にとってメリットを感じられる場合はその開設の目的次第でかなり有効な事業ではあると思いますが、この就労継続支援事業を柱にして事業展開するには・・・イマイチ乗り気になれません。
実際に、障害者の就労訓練が目的ですからね。
就労訓練ということは、何かしらの仕事を利用者にしてもらわないと就労訓練になりません。
ということは、柱になる事業を持っていない事業所では、事業側が仕事を作ってあげる必要もあるわけです。
それも大変だと思いませんか。
また、最近ではこの就労継続支援事業所がかなり増加傾向です。
社会的に精神的な問題で就労が困難となっている方も増えてきているということで、利用者も増加傾向にはあるのでしょうが、比較的開設しやすい事業であることもあり、就労継続支援事業所が互いに利用者の取り合いということも一部では見受けられているとか。
内部的にも外部的にも決して楽して稼げる事業とは言い難いのではないでしょうか。
最後に、まとめ。
就労継続支援事業書は一定の規模のある法人で柱になっている事業がすでにある法人にとってはいくらかの金銭的負担は発生するかもしれませんが、目的次第では有効に活用できる事業所だと言えそうです。
ただし、この就労継続支援事業自体を柱にした事業展開は・・・辞めといたほうがイイんじゃないかな。
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