病院の未収金回収について実務担当者の体験メモ

病院の未収金について

今更ですが、私ハヤスズは病院で働く事務員です。

電気のこと書いていたり、金融資産の事書いていたり、昔の銀行員時代の話を書いていたりと、かなり自由にここで書いていますが、現在のお仕事は病院の事務員が本職です。

そこで、たまには本職のことも書いておこうということで今回は『病院未収金の回収』について経験したことや考えていることをメモのような意味も含めて今回は書いていきます!!

では、タイトルの通り、病院の未収金回収というのは医療業界では大きな問題の一つでもあります。

じゃ、どのくらい未収金があるの??
ということで、調査も色々データがあるようですが、1病院の平均未収金額がだいたい5,000万円弱というデータがあります。
病院なので、医院やクリニックは含まれていません。
病院の平均だとこのくらいの未収金があるようです。

これって数字だけ見ても大きい金額ですが、もっと驚くべきことにこれは患者さんが負担すべき医療費の未収金額なので、病院では保険証を利用して医療サービスを受けるわけです。
ということは、その患者さんにかかったであろう医療費総額で考えると、全員が3割負担者だとしても1億6千万、1割負担と考えると5億円、間をとって2割負担者だと2億5千万円と、病院の未収金対象になっている医療費総額は軽く億単位を超える金額になっているんです。
幸いに、保険証を利用することで保険者から医療費の7割~9割は病院に入ってくるので、残りの患者負担分だけが未収金になっているので医療費をまるまる受け取れないということはないのですが、それでも1病院平均で5千万円弱あるんです!!

それでは、病院職員として増え続ける病院の未収金になにか対策をとっていないのか!?
そんな疑問があがるでしょう。
もちろん、病院として未収金委員会なる委員会を立ち上げたりして回収率を上げていく努力をしているのです。

それでも増えてしまうのが病院の未収金。

では、これまでの取り組みと考えたことについて書いていきます。

未収金回収取り組みの体験記録

未収金の回収は病院が提供した医療サービスにかかる医療費を回収することが目的で、この目的を達成するための手段が未収会議や委員会で話し合われるわけですが、手段もだいたい限られています。

考えられる回収手段

  • 電話催告
  • 文書督促
  • 訪問
  • 内容証明督促
  • サービサー(債権回収業者)の利用
  • 裁判所からの支払督促
  • 少額訴訟
  • 訴訟

未収金を回収する手段として代表的な手段はこんなもんです。

電話での催告や病院からの文書での督促はだいたいどこの病院もしています。

さすがにこれさえもしていないというのは問題外ですかねー。

次に訪問ですが、これもしている病院は少なくはありません

ガッツリと訪問して回収している病院というのは少ないかもしれませんね。

訪問も、このご時世なので自宅に行って未収金者がどんな行動に出てくるかわからないという怖さがあります。
あまり高圧的な態度で対応しても病院としてのイメージの問題もあったりしますし、そもそも訪問してどれだけの効果があるのか・・・というのも最近感じるところです。

続いて、内容証明による督促です。

内容証明は最初に手続きを覚えればそこまで難しい手続きではないのですが、実際に実施している病院は意外と少ないようです。
もちろん私も手続きをとったことがありますが、効果としてはまあまあといったところです。

内容証明が届いた!!とびっくりして払いに来る人もたまーにいますが、あまり感度が良くない人にとっては手紙が来たな~というくらいにしか受け取ってもらえないようで、最近は内容証明の手続きは取っていません。

続いて、サービサーといわれる、いわゆる債権回収業者の利用です。

よく新聞で県立〇〇病院が弁護士事務所に未収金回収を依頼したという内容の記事を見たりしますが、これがサービサーですね。

未収金回収に回せる人手がないので、サービサーに未収金回収を外部委託しているというようなことであればサービサーの利用もいいかもしれません。
ただ、サービサーに委託した場合の報酬や委託費の発生があるので、サービサーが回収した場合、病院の未収金が全額病院に入金されることはもちろん無くて、サービサーに成功報酬などを支払った後の残金が病院に入金されるということを考えると、病院にとってどれだけメリットがあるのかというのが疑問なところです。

当然専門の知識を持って対応に当たるので、病院職員が独自に未収金対応を取るより回収率は上がるかもしれませんが・・・病院にとっての実入りを考えた時にどうでしょうか。

そして、最後に裁判所を使った回収方法です。

裁判所で取りうる回収手段は、支払督促、少額訴訟、訴訟というのが一般的です。

これについては私が以前からその内容をブログで紹介していますが、

関連リンク

弁護士ではなくとも病院職員でできます!

裁判所というのは取っ付きにくい場所で、手続きも面倒に感じるかもしれませんが、ちょっとづつ手続きを覚えていけば8割型はひな形状態で、あとは金額や氏名等の修正をするだけで省力化して訴状なども作ることができるようになります。
ちょっと苦労するのが最初だけなので、ぜひやってみて欲しいと思ってます。

それに、裁判所を使っての回収手段を使っている病院ってそうそうありません。
全体で1割もないくらいです。
これを覚えると結構武器になってくれます。

まず、日常の生活を送っていて、ある日突然裁判所から手紙が来て、開けたら支払督促だった、訴状だったってなると、普通の感覚だとビビりますよね。
この『普通の感覚』をもっている人は、手紙が届いた時点ですぐに入金をしてくれます。
最初から払ってくれよ!と、言いたくもなりますが、5人に1人くらいは手紙が届いた時点でびっくりして払いに来てくれます。

それでもどうしても払えない人がいて、そんな人には粛々と手続きを進めていくのですが、少額訴訟であれば病院側と未収金対象者が裁判所で話し合いを行い支払いの条件の約束とその内容を記した調停書や和解書を作成してもらい、その内容に沿って支払いをしてもらいます。
また、支払督促であれば、何も未収金対象者からアクションがない場合は病院側の債権が確定され、病院側のタイミングで債権執行、つまり未収金対象者の金融機関の口座差し押さえや働いている職場からの給与差し押さえという手続きに進むことができます。

病院職員でもここまでの対応が取れるので、これができるのとできないのでは未収金回収にとって大きな違いが出てきます。

そして、裁判所における手続きを覚えるメリットはこれだけにあらず。

病院内で準備すべき書類と必要情報を理解してくる

病院側でも入院時に入院申込書といっしょに、身元引受人や連帯保証人を徴収したりしています。
では、その書面の情報でちゃんと目的が達成できるか考えたことありますか?

連帯保証人を取るということは、しっかりと医療費を回収する目的のためです。
しかし、その書面の内容で連帯保証人の要件が満たされているのか、回収時に使える情報が記載されているのか、考えたことがあるでしょうか。

おそらく、無意識にただルール通りに連帯保証人に署名捺印をもらっているだけでしょうね。
それが、普通の病院事務職員です。

もしも、裁判所における手続きを理解していれば・・・まず連帯保証人に書いている内容がそれで良いのか、必要な情報がしっかりと聞き取りされているかが重要だとそこで気づきます。

私がこれまで裁判所で手続きをとってきていて一番困ることが、『必要な情報が書いていない』ということです。

裁判所で調停書や和解書を作成してもらい、それでも支払いされない方がいた時に、次に取りうる手段は最終的な債権執行です。
この債権執行を行う際に、病院として実施しやすいのが預金口座の差押か給与の差押のどちらかになるのですが、どちらも最低限の情報がないと実施できません。
実施できないことはありませんが、債権執行がただの費用の無駄遣いになる可能性が大になります。

というのは、預金の差押はどこに口座を開設しているかわからない場合、近隣の金融機関を絨毯爆撃のように調べないといけません。
調べる先が増えるほど病院が負担する差押費用は増加するので、いざ差押の手続きは取ったものの何も差し押さえることができずにただの費用の無駄遣いになることがあります。

これは以前私がブログでも書いたとおりです。
とにかくどこに未収金者の口座があるのかを知っておかないと、効率よく未収金を回収することができません。

また、給与差し押さえについても同様です。
どこで働いているかの情報が不明確であれば、給与差し押さえを出したものの、空振りに終わる可能性が大です。
結果、差押費用の無駄だけを病院が被ることになるのです。

ということは、どうしても退院日当日に入院医療費を支払いできないという患者さんがいた場合には、患者さんと連帯保証人の金融機関の口座情報と働き先等を聞いておくことは必須であることがわかりますし、可能であればクレジットカードの情報を控えておく、そして、そもそも訴訟や支払督促の手続きをする上で書面上の内容が整っているかの確認が必要になります。

手続きとして途中の一つの手続きだけしか関わっていないと、本来その書類をもらう目的や必要な情報が書いてあるか、どういった情報が必要なのかということが見えません。
ところが、最終的な段階の手続きまで経験することで本来必要とすべき情報や中身が理解してくることができます。

病院の未収金回収を強化する上での懸念事項

私がここまで未収金の回収を強化してきて、当初懸念していたことが2点あります。

まずは、病院のイメージに傷がつかないか

未収金督促する場合にはこの病院のイメージを気にしがちかと思います。
病院は地域に根づいて、地域住民の健康を守る施設ということで、なんとなくクリーンでありたいというような、あくまで内部の人間の勝手な思い込みなのかもしれませんが、地域の方に愛されたいというような意識があります。

そこで裁判所まで使ってガツガツと督促を実施することは、『◯◯病院はこんなことまでして医療費を回収する』というようなイメージの悪化、そして評判の広がりがあるんじゃないか、そんなことを気にしていたのですが、案外なんてことないです。

むしろ、最近では『医療費を支払わないと大変なことになる!』というくらいのイメージを持ってもらった方が患者さんの意識も変わって安易に医療費を支払わないというようなこともなくなるんじゃないかと考えてます。
さすがに乱暴な言葉や行動ということはしませんが、世の中の法律に則っとった形でしっかりした対応は長期的には病院のイメージも未収金の回収にとってもプラスになるのではないかと思っています。

次に、裁判所の手続きまで取って実際に回収率が向上するか

裁判所を使うと費用がかかります。
そこまで費用をかけてまで回収ができなかったらどうしよう?

そんな心配も当初持っていました。

しかし、裁判所に支払う費用は、思ったよりはかかりません。

支払督促だけであれば7千円~1万円程度、少額訴訟であれば1万円~

この程度の費用で最初の手続きは取ることができます。
これから債権執行を行うとここに費用が上乗せされるのですが、最初の手続きだけであればビックリするような費用はかかりません。

また、回収率については、私の取り扱った未収金だけだと今4割を超えるくらいの回収率です。
この私が取り扱ったというのは裁判所の手続きをとった未収金額の中で4割回収ができているということになります。

中には分割払いの未収金もあるので、今後徐々に回収率は上がってくると思います。

ただ、裁判所を使って色んな手段を試してもどうしても回収できない人はいます。

そもそもお金を持っていない人からはどんな手段をとっても回収はできません。
当たり前ですよね。
だから諦めるというわけではないのですが、そういう未収金の方にはとりあえず裁判所で調停書や和解書までは準備してもらって、また時期を変えてから督促を促していくような流れで今は考えています。

そして、気になる費用対効果については、裁判所の手続きが軌道に乗ってきたら十分手続費用を回収した未収金でペイすることができます。
最初は手続きに費用の支出が先行するので心配になったりしますが、この裁判所での手続が軌道に乗ってきた頃には十分費用を回収するけの未収金回収ができているので、まずはその手続きの流れを軌道に乗せることが肝心です。

最後に

病院の未収金回収はやればやっただけの成果は返ってきます。

ある程度のところまで軌道に乗ってくれば未収金の回収に費やす時間も徐々に短縮されてきますし、取り組みをしていることが浸透してくれば、病院全体の意識も変わってきます。

もしも、何も取り組みをしていないのであれば、とにかくできることから始めていくべきですし、まだまだ及び腰でガッツリと取り組めていないのであれば、躊躇なく取れる対応を取っていけば未収金の回収率も向上してきます。
専門の職員を配置せず、外部に委託せずに自分たちで対応が取れるようになってくれば後はそれの繰り返しになってくるので、『未収金の回収なんてやだな~』なんていう気持ちも十分わかりますが・・・やったらやっただけの成果は必ず出てくるので、まず、やってみましょう!!

人が嫌がることができれば、それは自分の評価にも必ず返ってくるものだと思います。

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